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パンくずメニュートップページ >お知らせ>知床岬携帯基地局整備についての羅臼町長としての考え

 はじめに

 知床岬灯台携帯基地局の整備は、本来であれば、もうすでに構成された団体の同意のもと国がスタートさせていた事業について、自治体の長として意見を表明する必要はないのですが、この事業へ疑義を訴える声があり、現在、工事が中断しております。この状況は、どちらの立場にあるものにとっても決して良い結果に繋がらないものと思っております。
 そこで、羅臼町が以前から要請してきた経緯と羅臼町長としての思いをお伝えしたいと思います。

 

 羅臼町長としての考え

 みなさんもご承知のとおり、あの痛ましい知床観光船沈没事故から約2年後の令和6年4月26日に斜里町を会場に、それまで約1年をかけ議論を続けてきた「知床半島地域通信基盤強化連携推進会議」の構成メンバー(総務省・林野庁・水産庁・国土交通省・気象庁・海上保安庁・環境省・北海道・斜里町・羅臼町・知床半島地域関係団体・携帯電話事業者)が同席のもと報道発表され、スタートした基地局設置について、すでに工事が動き始めた後、一部の自然保護団体の意見書を受けた斜里町が計画の見直しを求めたことによる今回の問題について羅臼町長としての見解をお伝えしたいと思います。
 「知床半島地域通信基盤強化連携推進会議」の発足時の宣言には、知床半島の特殊性に鑑み、環境の保全に最大限に配慮しつつ、利用者の安全・安心の確保及び地域の活性化に資することを目的とする(中略)としております。

 私としては、今までもお伝えしてきた通り、大前提として知床の自然を守り続け後世に残していかなければならないということについては、知床を構成する自治体として当然のことであり、何の反対もありませんし、それぞれ個人や団体の立場や考え方や思想や意見があることにも反対するものではありません。
 しかしながら、一方で知床が国立公園になる遥か昔から幾多の自然災害や厳しい環境に翻弄されながらも大自然に立ち向かい、共存しながら、知床の海を生業・生活のための場として利用し続けてきた漁業がここにあることも忘れるわけにはいきません。
 文明が発達して世の中ではデジタル機器を活用して生活や仕事をするのが当たり前であり、当然のこととなっております。 そのような中にあっても知床羅臼の漁業者は、資源保護を目的とし、小さな船で一人漁を行うという自主ルールのもと生産活動を続けてきました。羅臼昆布漁に至っては、漁期を限定しながら独特の製造方法を見出し、現在は日本を代表する昆布として確立されたものであり、今回の携帯電話不感地域の赤岩地区は、羅臼昆布の優良な漁場であります。ウニ漁にあっても同じ現状です。

 これまでも、知床の海では、古くは4・6突風や5・10突風という今でも語り継がれている大惨事がありましたし、近年においても漁船からの転落や作業中の事故が幾度も起きておりますし、トレッキングで訪れた大学生が波にさらわれた事故は、記憶に新しいものであります。その時も救助の連絡までに相当な時間を要し、携帯の電波があったらと悔やんだものでした。そのような事故などを含め、この他にも知床では多くの人命が奪われております。

 羅臼町では、知床半島先端地区の海域で起きた約2年前の痛ましい事故以前から、関係団体と共にこれまでいろいろな機会を通じ、携帯電話不感地域の解消を訴えてまいりました。携帯電話の不感地域の解消は、単に連絡手段を持つということだけではありません。今や、携帯電話は安心・安全を確保する手段及び経済・社会の基盤として必要なインフラとなっています。特に漁業者にとっては、情報収集機能を備えた必需品であり、この先の天気や流氷の現在地などが瞬時でわかり、それをもって判断ができ急激な天候の変化に対応でき、事故を未然に防ぐことが可能となるものであります。

 昨年、携帯電話不感地域の解消が現実となることを確認し、羅臼町は羅臼漁業協同組合、観光船協議会と共に「よびもり」という緊急連絡ツールを開発した会社(ちなみに開発者の祖父は羅臼町の漁師で1975年の海難事故で今も行方不明)と不感地帯解消後の利用に向けて準備をしてきました。この「よびもり」は、一人で作業中に不測の事態になった時や、観光船や漁船からの転落時などに身に着けているボタンを押すことにより、携帯の電波を使い、近くの船や仲間の携帯電話に緊急連絡がいき、GPS機能によって場所の特定もでき、その人を発見、救助してあげることのできるものであります。二次的な災害や捜索にも役立つことも確認されました。

 また、知床岬へ向かうトレッカーに対しても遭難や熊との遭遇などの緊急時に役立つこともわかっております。
 令和5年1月23日、この事業が進むことを確信して、漁協や観光船事業者など多くの関係者や町民、漁民の協力のもと、海上での大規模なシミュレーションも済んでおり、予想以上の成果が確認され大いに期待をし、その後、開発会社・羅臼町・羅臼漁業協同組合・知床羅臼観光船協議会の4者での協定も結びました。この時のスローガンは、「日本で一番、救助が早い海をつくる!」です。

 今回、実施される場所にオジロワシの巣があるのではないか。太陽光パネルが生態系に影響を及ぼすのではないかと、科学委員会において、専門家の方々が集まって議論をしていることや自然保護団体の皆様から多くのご意見をいただいているのは承知しております。私も知床の住民の一人として自然環境の保全や生態系を脅かすような行き過ぎた行為は望んでおりません。
 しかし、今回の通信環境改善のための事業は、先人が幾多の災害や事故を乗り越え築いてきた伝統・文化・自然・産業を未来永劫繋いでいくため、知床を構成する現代を生きる住民のささやかな最低限の願いでもあると受け止めています。
 知床が世界自然遺産に登録された20年前にも多くの議論を重ね、知床の海を生業の場として行われる漁業生産活動には影響を与えることはなく、漁民に不利益をもたらすことはないという共通の認識(約束)が交わされています。
 先にも言ったように知床の漁師は現代のデジタル等のツールを利用して安心・安全に漁業生産活動や観光業をすることが、世界自然遺産の知床なのだから許されないということであれば、到底納得できるものではありません。

 私は、漁業を基幹産業としている羅臼町において、知床海域での安全を確保し、安心して操業できる環境整備を行い、漁民の命を守ることこそが、町長としての使命であると確信しております。
 自然に立ち向かいながらこの地で生きていかなければならない人やこの知床に訪れてくれた方々の人命を第一に考え、あの痛ましい事故を教訓に進めてきたこの事業を計画通り推進していただくことを切に願うものであります。

 

羅臼町長 湊 屋  稔

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